遺品整理と相続放棄は密接なつながりがある?
故人が亡くなり、その財産を相続するか放棄するかは相続人の自由です。有益な不動産などがあれば相続し、借金など負の財産があれば放棄してもよいでしょう。しかし、遺品整理と相続放棄は深いつながりがあります。そのため、安直な考えで決めてしまうのは危険です。では実際にどのようなつながりがあるのでしょうか?
相続放棄をしたい人が遺品整理をするのはNG!
「故人との思い出だから…」と遺品整理を始め、形見分けをすることもあるでしょう。遺品の中には故人との思い出が詰まった、大切な宝物があるかもしれません。しかし「相続はしない!相続放棄をしよう!」と考えているのであれば、遺品整理をするのはNGです。その理由を解説します。
相続を承認したことになる
相続放棄確定前に遺品整理をすると、相続を承認したとみなされる可能性があります。そうすると負の財産がある場合かなりのリスクになってしまいます。そうしたリスクを回避したいのであれば、遺産の整理には手を付けないでおきましょう。しかし、まったく遺品が触れないというわけではありません。経済的な価値がないものは問題ないとされているため、大切な手紙や写真などはもらっても大丈夫です。
ただし、ほかのものに触っていないことを証明できなければ「遺品整理をしたから相続を承認した」といわれてしまうこともあるでしょう。そうした事態を避けるためには、経済的な価値があるものに触れていないと証明できるシチュエーションが必要です。たとえば複数の人が見ている中で手紙や写真を探す、動画を撮影する、などです。「相続を承認した」とみなされないためにも、しっかりと対策して故人との思い出の品を探しましょう。
相続放棄しても遺品整理する必要がある可能性がある
相続放棄したい人が遺品整理をするのはダメですが、放棄しても遺品整理する必要がある場面もあります。たとえば管理人を選定していないケース、素早い対応が必要とされるするケースです。相続を放棄しても財産を管理する義務はなくならないため、そのような場合に遺品整理の対応を求められることがあります。
管理人を選定していないケース
相続放棄をした場合、相続財産管理人を選定すると管理する義務はなくなります。しかし、選定するまで管理の義務が消えることはありません。選定中の期間であっても遺品を整理しなければならない状況になれば、管理の義務がある人が遺品整理や特殊清掃をしなければならないパターンもあります。
素早い対応が必要とされるケース
もし孤独死の場合、発見が遅れて悪臭を放っていたり汚れがひどくなっていたりする場合があります。近隣から苦情が寄せられていたり、虫が大量発生していたりすれば素早い対応を求められることもあるでしょう。この場合、相続放棄しても管理人をまだ選定していないのであれば、特殊清掃を業者に依頼したり遺品の整理をしたりする必要があります。
近隣へ悪影響が出ており、やむを得ない状況でしょう。この状況で遺品整理したことで相続を承認したとみなされないためには「相続放棄の予定であること」と「相続の放棄が確定する前に遺品整理を行う必要があったこと」を弁護士に相談するとよいでしょう。
遺品整理の費用は誰が負担するのか
相続放棄をすれば遺品を整理する義務はなくなりますが、費用を負担する義務がなくなるわけではありません。基本的に支払い義務があるのは管理人です。しかし、兄弟が親の遺品整理をしたとすれば、かかった費用を請求してくることもあります。
この場合「自分の親だから…」と遺品整理にかかった費用を一部負担することもありますが、相続放棄したことや管理人ではないことを条件に費用の負担を拒否することあるでしょう。では、次の場合はどうでしょうか?
相続人が賃貸契約の保証人などの場合
相続人が賃貸契約の保証人などであれば、保証人として明け渡し義務を負うことになります。部屋を明け渡すには遺品の整理が必要です。相続を放棄しても財産の管理の義務は放棄できないため、遺品整理をする必要があります。遺品整理と不動産などの財産の管理をしたくないときは、相続財産管理人を選定し、管理と整理を任せましょう。
遺品整理で発生するトラブルを防止するには
相続放棄しても場合によっては遺品整理や特殊清掃をしなければならないなど、トラブルのもとになりそうなポイントはいくつかあります。故人の兄弟や子どもが複数いれば、だれが何を負担するかでトラブルになるかもしれません。
そこでおすすめなのが遺品整理サービスの利用です。代わりに遺品整理をしてくれるため時間や労力がかからないほか、原状回復や遺品の供養などのオプションサービスを利用できることもあります。料金やオプションは業者によって異なるため、時間に余裕があるのであれば複数の業者を見比べて検討しましょう。
まとめ
相続放棄をしたくても、放棄が確定するまでの間に遺品整理をすると相続を承認したとみなされます。経済的な価値がない手紙や写真をもらうのであれば問題ありませんが、ほかに持ち帰ったものや触ったものがあれば「相続を承認した」とみなされるかもしれません。また、相続を放棄しても管理する義務はなくならないことに注意しましょう。遺品整理や管理を回避するには、早めに管理人を選定することが重要です。負の財産を相続してしまうリスクや相続をめぐるトラブルを避けるためにも、注意して遺品整理しましょう。